はらいそへいくにはけだしはやすぎる

みなさんこんにちは。ふじみです。

今から40年前、私の母は猛烈に困っていました。
自宅にて大好きなバンドのレコードをかけていると、
ある曲にさしかかるたびに、決まって娘がぼだぼだ涙を流すからです。

「どうしたの?大丈夫?この歌嫌い?かけるの止そうか?」
「ううん。きく」
慌てて声をかけても娘がそう言うので曲を再生するも、
娘は泣き続け、停止したらしたで聴きたがる…という状態。
母はほとほと困惑し、幼稚園の先生に相談していました。
そうこうしているうち、日に日に娘も泣かなくなり、
何が何だか時間が一応の解決をもたらしてくれたとのことです。

当時、当事者である私はというと
なぜその曲が自分の涙腺を刺激するのかまったくわからず、
「あっまたないちゃった、おかあさんこまるよな、
 でもこのきょくすきだな」
と終始ぼんやりしていました。
なんせ5歳だったし、自分の涙の理由はわかりませんでした。
少なくとも、歌詞を理解して泣いていたとかでは断じてなかったように思います。
なんせ5歳だったし。

2023年。
『希望の河』の詞と曲を書き、歌っていた方が旅立ちました。
ほどなくして、この曲をともに作り、
演奏していた方も旅立ちました。

このバンドの結成年に生まれた私は
大人になってからは泣くことこそなくなったものの
ずっと彼らの曲を聴いていて、歌って、
同じように彼らの曲を好きな人と出会って生きてきたので
とても寂しく思います。
訃報を聞き、母にはスマートフォンでいつでも聴けるよう
音源を送りました。
時代が変わっても
一生好きでいられるだろうと思えるものに出あえて
幸せだと思いながら、
これからも生きようと思います。