役に立つかどうかわからん古典トリビア(7)

人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける 紀貫之
  久方の光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ 紀友則

 現在、「花」といえば桜を思い浮かべる人が多いですが、「花といえば桜」という連想はいつごろから始まったのでしょうか?
 日本に梅と花見の習慣が伝わったのは、遣唐使によって中国との交流が盛んだった奈良時代からだと言われています。当時の中国では、梅を見て漢詩を読むというのが貴族のたしなみでした。そこで、日本でも梅(とくに白梅)を愛でながら宴を催し、漢詩を読んでいたのです。日本最古の漢詩集「懐風藻」を読むと、「花=梅」をうたった漢詩が多く載っています。この流れで、「やまとうた」と呼ばれた和歌でも「花=梅」とみなすものが多かったのです。
 しかし、遣唐使が廃止されて国風文化が全盛になると、しだいに人々の関心は梅から桜に移ります。新古今和歌集の時代には「花」といえば「桜」を指す和歌を詠むことが多くなりました。それが連綿と現代まで伝えられてきたのです。ただし、日本には四季折々の花が咲くので、必ずしも和歌に詠まれた花が桜とは限りませんのでご注意を。この和歌に詠まれた花は何だ!? と思ったときには、和歌の前につけられた前書き(=「詞書(ことばがき)」といいます。)を参考にして判断しましょう。
 さて、冒頭の紀貫之と紀友則の和歌に詠まれた「花」は桜でしょうか、梅でしょうか? ヒントは、紀貫之の和歌にある「香ににほひける」と、紀友則の和歌の前書き「***のちるをよめる」です♪
古池ケロリ