役に立つかどうかわからん古典トリビア(4)

結廬在人境        いおりを結んで、人境にあり
  而無車馬喧        しかも車馬の喧しきなし
  問君何能爾        君に問う、何ぞよくしかるやと
  心遠地自偏        心遠ければ、地おのずから偏なり
  采菊東離下        菊をとる東離のもと
  悠然見南山        悠然として南山を見る
(陶淵明『飲酒』)

 「六日の菖蒲、十日の菊(=アヤメは五月五日の端午の節句、キクは九月九日の重陽(ちょうよう)の節句に必要な花で、翌日に飾っても意味がないところから、必要なときに遅れて役に立たないことのたとえ)」ということわざがあるとおり、九月九日は重陽の節句です。これは、端午の節句や桃の節句、七夕などと同様に、中国から伝来した節句の一つで、旧暦の九月は菊が咲く季節であることから、菊の節句とも呼ばれます。
 もともと、中国の思想である陰陽思想では、奇数は陽数であり、奇数が重なる日は特にめでたいとされていました。なかでも「重用」は陽数の中で一番大きな数字である「九」が二つも重なるため、とてもめでたい日とされていました。今年・二〇〇九年九月九日は「九」が三つも重なったので、例年よりさらにめでたい日になったかもしれませんね。
 さて、この重陽の節句は平安時代初期に伝来しましたが、当時は舶来品である菊を観賞しながら酒を飲んだり、漢詩を詠んだりと、専ら貴族の間だけで行われたため、現在のわたしたちにはあまり馴染みのない節句となりました。
 重陽の節句では酒に菊の花びらを浮かべて飲んだり、菊についた朝露を飲んだりして長寿を祈ったそうです。今年は陶淵明を気取って、仲秋の名月と一緒に菊酒を飲むというのも風流かもしれませんね。
古池ケロリ

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