残暑

私の実家の近くは,天野山や高野山へ続く街道が通っており,街道沿いには石の道標がいくつも見られる,歴史情緒のある場所です。

その天野街道と高野街道の分岐点には,石の道標の隣にお地蔵さんがいます。
この近辺では昔から,お盆を過ぎたころに「地蔵盆」があり,近所の世話人たちがお地蔵さんを綺麗にして,新しい前垂れをかけておまつりします。

地蔵盆の日は,お地蔵さんの前にテント屋根が作られ,その周辺の家々の子どもの名前が書かれた派手な提灯が飾られて,たくさんのお供え物がされます。
お供え物は,豪華な駄菓子の詰め合わせとお赤飯のおにぎりで,地蔵盆が終わると子どもたちへ配られます。

大きな俵型の二つの赤飯は,配られる頃には表面が乾いているし,小豆はぱさぱさでしたが, 年に一度の特別なものであって,横に添えられているまっ黄色なおこうこ(たくあんのこと)と一緒に食べると美味しくて好きだったような気がします。

肩が痛くなりはじめた四十過ぎ,昔を思いおこすことが多くなりました。

ここ数年はお盆になると,お地蔵さんの新しい前垂れに,母と妹と私で写経をして,母が仕立てるのが恒例になっているのですが,
母がこないだ,同じ字を書いていても,字の癖が三人とも全然違っていて面白いと前垂れを見比べて言っておりました。全員同じ習字の先生に教えてもらっていたのになあ。

今年もどこかへ旅に行かずとも,よい夏の思い出ができました。

しょ