役に立つかどうかわからん古典トリビア(10)

奥山にもみぢ踏み分け鳴く鹿の声聞くときぞ秋は悲しき 猿丸太夫
  あらし吹く三室の山のもみぢ葉は竜田の川の錦なりけり 能因法師

 今年は秋が短くて、もみじ狩りに行く期間は短くなりそうですね。この「もみじ」ですが、「黄葉」「紅葉」という二種類の漢字表記があることをご存じでしょうか? 上代では「黄葉」、平安以降は「紅葉」と表記されることが多いそうです。
 では、上代に生えていた木は黄色に変わるものしかなかったのでしょうか? いえいえ、そんなことはありません。上代は、中国文化の影響をいろいろ受けており、もみぢの色もその例外ではなかっただけのことなのです。陰陽五行説では、春・東=青、夏・南=赤、秋・西=白、冬・北=黒、各季節の最後の月・中央=黄色と決められています。黄色が配された中央は帝王の場所=特別な場所であることと、紅葉は葉の色が変わるという不思議な現象であり、季節の変わり目を知らせる現象だったために、特別な色である黄色を使って「黄葉」と表記したのではないでしょうか。
 さて、ここで問題です。猿丸太夫の和歌の「もみぢ」と能因法師の和歌の「もみぢ」は、それぞれ何色でしょうか。
 ヒントは猿丸太夫は上代、能因法師は中古(平安時代中期)に活躍した人物だということです。
古池ケロリ

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